【ぼくの家族はみんな誰かを殺してる_レビュー】黄金時代を彷彿とさせる本格ミステリー

【ぼくの家族はみんな誰かを殺してる_レビュー】黄金時代を彷彿とさせる本格ミステリー

商品情報:

  • 商品名: ぼくの家族はみんな誰かを殺してる
  • キャッチコピー: 黄金時代を彷彿とさせる本格ミステリー
  • カテゴリ: ミステリー小説
  • 販売元: ハーパーコリンズ・ジャパン
  • 価格: 1,470円(記事制作時点での価格)
  • 発売日: 2024年7月24日
  • 商品リンク(アフィリエイトではありません):https://www.amazon.co.jp/dp/4596961328

商品概要:
ベンジャミン・スティーヴンソン氏の「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」は、古典的な本格ミステリーの魅力を現代に蘇らせた一冊。雪山のロッジに集まったカニンガム一家を襲う連続殺人事件。容疑者は家族全員。探偵役のアーネスト・カニンガムと共に、読者も謎解きに挑戦できる、フェアプレイなミステリーだ。

商品の特徴:

  • アガサ・クリスティなど黄金時代の本格ミステリーを彷彿とさせる展開
  • 複雑に絡み合う家族の秘密と、二転三転するプロット
  • ロナルド・ノックスの十戒を忠実に守った、フェアプレイな謎解き
  • ウィットに富んだ語り口で、古典的でありながら新鮮な読後感
  • 世界27カ国で刊行された国際的ベストセラー
  • 謎を解くための手がかりがすべて織り込まれた、読者参加型のミステリー

本文:

黄金時代への郷愁と現代的な魅力の融合

「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」は、タイトルの衝撃的な響きとは裏腹に、古き良き本格ミステリーへの愛に満ちた一冊だ。著者のベンジャミン・スティーヴンソン氏は、アガサ・クリスティをはじめとする1930年代の本格推理小説に魅了され、その魅力を現代に蘇らせようと本作を執筆した。

結果として生まれたのは、古典的な要素を備えつつも、決して古臭くない新鮮な魅力を持つミステリー小説だ。雪山のロッジという閉鎖空間、複雑な人間関係を持つ一族、そして探偵役の存在。これらの要素は確かに古典的だが、軽妙洒脱な語り口と現代的な視点によって、新たな輝きを放っている。

複雑に絡み合う謎と家族の秘密

物語の舞台となるのは、曰くつきのカニンガム家だ。35年前に父親が警官を殺害して以来、世間から白い目で見られてきたこの一族が、3年ぶりに雪山のロッジに集結する。そして案の定、彼らの到着翌日、見知らぬ男の死体が発見される。

9人の家族メンバーはそれぞれ何かを隠しており、怪しい行動を取る。そして第2の殺人が発生し、状況はさらに複雑化していく。読者は探偵役のアーネスト・カニンガムと共に、錯綜する謎に挑むことになる。

フェアプレイの精神

本作の大きな特徴は、ロナルド・ノックスの十戒を忠実に守ったフェアプレイな謎解きにある。すべての謎を解くための手がかりは、物語の中に織り込まれている。つまり、読者にも探偵と同じ条件で謎解きに挑戦するチャンスが与えられているのだ。

この点は、本格ミステリーファンにとっては大きな魅力となるだろう。謎解きの楽しさを存分に味わいつつ、最後には「やられた!」と膝を打つような驚きの結末が待っている。

国際的な評価

本作は既に世界27カ国で刊行され、各国で高い評価を得ている。「Washington Post」は「古典的なフーダニットに、ウィットに富んだひねりを加えた作品」と評し、「Publishers Weekly」は「非常に巧みで面白い。著者はこの力作を、見えそうで見えないトリックを巧妙に操るマジシャンのごとく生みだした」と絶賛している。

日本語版の翻訳も、原作の魅力を損なうことなく、読みやすい文体で仕上げられている。

編集部員Impression:
「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」を読了して、まず感じたのは懐かしさと新鮮さの不思議な融合だ。確かに設定や展開は古典的な本格ミステリーそのものだが、語り口の軽妙さや現代的な視点が加わることで、決して古臭い印象にはならない。

特に印象的だったのは、複雑な家族関係の描写だ。9人もの登場人物それぞれに個性的な背景が与えられており、その関係性を把握するのに少し苦労したが、それも含めて楽しめた。各キャラクターの秘密が少しずつ明かされていく過程は、まるでパズルのピースを組み合わせていくような面白さがあった。

フェアプレイの精神に則った謎解きも、本格ミステリーファンにはたまらないだろう。私も何度か「これで謎が解けた!」と思ったが、その度に新たな疑問が生まれ、最後まで油断できなかった。結末を迎えた時には、見事に騙されたことを認めざるを得なかった。

著者のベンジャミン・スティーヴンソン氏の文章力も素晴らしい。複雑な状況説明や人物描写を、決して退屈させることなく進めていく技術は見事としか言いようがない。また、所々に散りばめられたユーモアも作品に良いアクセントを与えている。

一方で、古典的な本格ミステリーの作法に則っているため、現代のスリリングなサスペンスに慣れた読者には、やや物足りなさを感じる部分もあるかもしれない。しかし、それは本作の欠点というよりは、むしろ魅力の一つだと私は考える。

「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」は、本格ミステリーの王道を行く作品でありながら、現代的な風味も兼ね備えた秀作だ。推理小説ファンはもちろん、「昔ながらの」ミステリーに興味のある読者にもぜひ手に取ってほしい一冊である。読了後、すぐにもう一度読み返したくなる、そんな中毒性のある作品だった。