【赤と青とエスキース_レビュー】一枚の絵が紡ぐ、感動の連作短編集

赤と青とエスキース_レビュー

商品情報:

  • 商品名: 赤と青とエスキース
  • キャッチコピー: 一枚の絵が紡ぐ、感動の連作短編集
  • カテゴリ: 文芸小説
  • 販売元: PHP研究所
  • 価格: 858円(記事制作時点での価格)
  • 発売日: 2024年9月10日
  • 商品リンク(アフィリエイトではありません):https://www.amazon.co.jp/dp/4569904238

商品概要:
青山美智子氏の2022年本屋大賞第2位作品「赤と青とエスキース」の文庫版。一枚の絵画をめぐる5つの短編が絡み合い、最後に驚きの真実が明かされる連作短編集。メルボルンでの留学生活や額縁職人の日常など、様々な視点から描かれる愛の物語が、読者の心を揺さぶる。

商品の特徴:

  • 一枚の絵画「エスキース」をめぐる5つの短編が巧みに連作
  • 赤と青のモチーフが各章を通じて効果的に使用される
  • 留学生活や職人の世界など、多様な背景設定
  • 各章が独立した魅力を持ちつつ、全体で一つの大きな物語を形成
  • エピローグで明かされる真実に、読者が感動する構成
  • 2022年本屋大賞第2位受賞作品の文庫化

赤と青が織りなす5つの物語

「赤と青とエスキース」は、一枚の絵画「エスキース」をめぐる5つの短編から構成される連作短編集だ。各章のタイトルには「金魚とカワセミ」「東京タワーとアーツ・センター」など、赤と青を想起させるモチーフが用いられており、この色使いが物語全体を通じて重要な役割を果たしている。

第1章「金魚とカワセミ」では、メルボルンに留学中の女子大生・レイと現地の日系人・ブーとの「期間限定の恋」が描かれる。異国の地での孤独と恋、そして別れを控えた二人の心情が繊細に描写され、読者の胸を打つ。

第2章「東京タワーとアーツ・センター」では、額縁職人の空知が登場。仕事への迷いを感じていた彼が「エスキース」という絵に出会い、新たな決意を抱く様子が描かれる。職人の世界と芸術作品との出会いが、丁寧に綴られている。

巧みに絡み合う物語の糸

一見すると独立した短編に見える各章だが、読み進めるにつれて物語の糸が徐々に絡み合っていくことに気づく。登場人物たちの些細な言動や背景設定が、他の章と微妙に関連していることが分かり、読者は謎解きをするかのような楽しみを味わえる。

特に印象的なのは、第4章「赤鬼と青鬼」のラストシーン。ここで明かされる意外な事実に、多くの読者が驚きと感動を覚えるだろう。

エピローグで明かされる真実

全ての章を読み終えた後のエピローグでは、これまでの物語が見事に結びつき、驚くべき真実が明かされる。ここで初めて、「エスキース」という絵画の真の意味と、各章に散りばめられていた伏線の回収が行われる。

この構成により、読者は物語を読み終えた後も長く余韻に浸ることができる。また、二度読みすることで新たな発見があり、より深い感動を味わえる仕掛けとなっている。

編集部員Impression:
「赤と青とエスキース」を読み終えて、まず感じたのは「なんて巧みな構成なんだろう」という感嘆の念だった。一見バラバラに見える5つの短編が、最後にはピタリと一つの大きな物語として結実する様は、まさに芸術作品を見ているかのようだった。

特に印象的だったのは、「赤」と「青」というモチーフの使い方だ。各章のタイトルや物語の中に散りばめられたこの二色は、単なる色彩描写以上の意味を持っていた。それが最後に明かされる真実と結びつくとき、読者は思わず「ああ!」と声を上げてしまうだろう。

また、各章の登場人物たちの描写も秀逸だ。メルボルンでの留学生活を送るレイの孤独感や、額縁職人・空知の仕事への迷い、そして「赤鬼と青鬼」に登場する中年カップルの複雑な感情など、それぞれの心情が繊細かつ丁寧に描かれている。読者は自然と登場人物たちに感情移入し、彼らの喜びや悲しみを共に体験することができる。

物語の展開も絶妙だ。各章が独立した短編として十分な魅力を持ちつつ、同時に全体として一つの大きな物語を形作っている。読み進めるにつれて徐々に明らかになる各章の繋がりに、読者は推理小説を読むような知的興奮を覚えるだろう。

エピローグでの真実の明かし方も見事だ。唐突な種明かしではなく、これまでの物語を丁寧に紡ぎ直すように真実が明かされていく。そのため、読者は「騙された!」という不快感ではなく、「すべてが繋がった!」という感動を覚えることができる。

文庫版の装丁も、作品の雰囲気をよく表現している。赤と青を基調としたシンプルなデザインは、物語の本質を端的に表現しており、手に取る人の興味を惹くだろう。

「赤と青とエスキース」は、短編集としての魅力と長編小説としての奥深さを兼ね備えた、稀有な作品だと言える。一度読んだだけで満足せず、何度も読み返したくなる中毒性も持ち合わせている。文学作品としての完成度の高さはもちろん、読書の純粋な楽しさを思い出させてくれる一冊だ。本を読むことの喜びを再確認したい全ての読者にお薦めしたい作品である。